「ジャパニーズライスワイン」日本酒は米から造る、ワインのような醸造酒。酒匠「北海道産酒BARかま田」店主 鎌田孝

ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」に欠かせない日本酒は、「ジャパニーズライスワイン」として、海外の食通のなかでも評価が高まっているお酒。日本酒の特徴や北海道の酒造りについて、日本酒・焼酎のテイスティングのプロ「酒匠(さかしょう)」の資格を持つ、「北海道産酒BAR かま田」店主の鎌田孝さんに伺った。


國酒(こくしゅ)である日本酒は、料理を引き立てる味わいが魅力

日本酒は、焼酎と並ぶ國酒のひとつ。國酒とは、フランスのワイン、ドイツのビールのように、各国を代表するお酒のこと。日本酒は、米と米麹、水を主な原料とした醸造酒である。

「醸造酒としての日本酒の歴史は約2000年。日本酒は神事、お祭り事など日本の文化を知るうえで、欠かせないお酒です。僕は世界各地のお酒を飲んできましたが、さらにその国その国の食文化とも融合しています。その点でマリアージュと言われる「料理との組合せ」を考えると「旨味」がある日本酒はとても幅広く「食」とマッチングするんです。そして旨味と共に程良い酸味があるので、酔う手段としてのお酒である事も事実ですが、より料理の味を引き立たせるお酒と言えます。」

醸造酒の固定概念を打ち砕く、驚きがいっぱいの日本酒

2015年に開催された「ミラノ国際博覧会」で、北海道の食や文化を発信する「北海道の日」に、「酒匠&北海道ソムリエ」として日本酒をはじめとする北海道産酒の紹介、試飲、そして國酒の魅力についての講演をしてきた鎌田さん。醸造酒としての日本酒の位置づけが、ヨーロッパでも確実に上がっている手応えを感じたという。

「海外では『ジャパニーズライスワイン』と呼んで、ワインと同じ醸造酒のカテゴリーでPRしています。例えば、ワインの香りを好む外国人は、香りが華やかでフルーティーな吟醸系のお酒が好み。米が持つ甘みや深みある芳醇さに、ワインと同様な美味しさを感じ取ってくださるんです。お酒が好きな方に驚かれるのは、醸造酒でありながら20度近いアルコール度数が出せる日本酒ならではの醸造法。これは経験値から来た「発酵システム」の知恵の集積によるもので、醸造酒においてありえないほどの度数の高さなんですね。また、飲用温度の幅の広さも驚かれることのひとつです。下は5℃から上は55℃くらいまで、それぞれの温度で味わいが変化するんです。世界じゅうでは温めて飲む醸造酒はもちろんいっぱいありますが、スパイスやハーブ、砂糖など何かを加えて飲むことが多い。日本酒は何も加えずに味の変化が楽しめる素晴らしさがあります。そしてなにより、日本酒はワインなどに比べて価格が安い。例えば720mlで3万円なんて出したら、超最高品質の日本酒が買えますからね。」

水と職人、地元の酒米が揃った北海道の酒造り

国内で現存している最古の酒蔵は、茨城県にある須藤本家(1180年創業)で835年の歴史がある。北海道では、日本清酒の前身となる「柴田酒造店」が、1872年(明治5)に創成川のほとりで酒造りを行ったのが始まり。寒冷地である北海道で、初めて酒造好適米が誕生したのは1998年のこと。地元の酒造好適米原料で造るお酒を「地酒」とするなら、北海道の日本酒の歴史はまだ始まったばかりといえる。

「1970年代から海外で日本酒の魅力を発信し続けてきた旭川の酒蔵が「木綿屋男山本家 男山株式会社」です。世界でほとんど日本酒の良さを理解して貰っていなかった時代に世界中に日本酒を知らしめた立役者です。あれから約40年。海外では、「男山」が並んでいるのをほんとうに良く見かけますし、外国で日本酒のことを尋ねると『男山なら知っているよ』と言われます。北海道民として誇らしいですね。かつて北海道の日本酒は、米どころである本州の酒米を原料に造られていました。当時は輸送費もかかるうえ、米が不作の年には質の良い原料が回ってこないこともありました。それが北海道で酒米の生産ができるようになった今では、道内で造られる日本酒の約58%が北海道産の酒米を原料にしています。北海道の冬の寒さを逆手にとった雪中貯蔵など、気候を生かした日本酒もあります。おいしい水と、職人の技に地元産の米が加わり、北海道の日本酒は「地酒」の条件がすべて揃ったと言えますね。ぜひ、その土地ならではの地元素材で手を加えたお料理と北海道の地酒で、忘れ得ぬ「旅の思い出」を作っていただきたいです。」

鎌田 孝

北海道産酒BAR かま田店主
酒匠&北海道ソムリエ

「第3回世界きき酒師コンクール2012」にて、大会初の日本酒部門、焼酎部門ダブル準優勝受賞。国酒ソムリエ世界一と言われる存在。酒匠、日本酒学講師、日本酒きき酒師、焼酎きき酒師、ワインソムリエ、日本酒品質鑑定士、焼酎品質鑑定士、ワイン品質鑑定士、北海道フードマイスター、北海道観光マスター、調理師などの資格を持ち、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、講演等に於いても国内外に北海道の魅力を発信する「北海道ソムリエ」として精力的に活動。店主を務める「北海道産酒BAR かま田」では、オリーブオイル以外すべて道産の食材を使った料理と300種類を超える日本酒、焼酎、ビール、ワイン等の道産酒のみを提供。英語メニューを備えるほか、鎌田さんがいれば英語対応してくれる。

北海道産酒BAR かま田
札幌市中央区南4条西4丁目MYプラザビル8階
電話011-233-2321