北海道立三岸好太郎美術館

木立が茂る庭にたたずむ、アトリエのような美術館

札幌出身で日本近代洋画史を彗星のごとく駆けぬけ、わずか31才で夭逝した画家、三岸好太郎(みぎしこうたろう)の作品を収蔵し、その画業を紹介する個人美術館。遺族から220点の作品が北海道へ寄贈されたのを機に、1967年に「北海道立美術館」(三岸好太郎記念室)として開館。1983年には三岸好太郎のアトリエのイメージを取り入れた同館を現在地に建設し、新たに開館した。三岸好太郎の生涯にわたる代表的作品を展示する所蔵品展を中心に、三岸の芸術をさまざまな角度からとらえた特別展のほか、講演会や音楽会なども開催されている。

マリオネット [油彩・キャンバス/1930(昭和5)]

マリオネット [油彩・キャンバス/1930(昭和5)]

両手両足をいっぱいに広げて立ちはだかり、不気味な笑いを浮かべた操り人形をモチーフとした作品。その特異な主題と表現は、三岸の新境地を示すものとなり、その後1932年にかけ、どこか憂愁を感じさせる道化やマリオネットなど一連の作品が制作されていく。

オーケストラ [油彩・キャンバス/1933(昭和8)]

オーケストラ [油彩・キャンバス/1933(昭和8)]

スポットに照らし出されたようにタクトを振り上げる指揮者の下、団員が熱演を繰り広げている。指揮の軌跡のようなものまで表現されているが、この線描は金属棒などの尖端でひっかく手法によるもの。あたかもタクトを操るかのように、三岸の筆は画面を縦横に動き回っている。

のんびり貝 [油彩・キャンバス/1934(昭和9)]

のんびり貝 [油彩・キャンバス/1934(昭和9)]

1934年春、三岸は蝶と貝殻をモチーフとした一連の作品をわずか10日間ほどで描きあげて独立展に出品。前年とは一変した幻想的な表現は、賛否両論を引き起こした。その後、三岸は夫人とともに「貝殻旅行」と称して旅に出るが、その帰途持病に倒れ31歳の生涯を閉じる。

飛ぶ蝶 [油彩・合板/1934(昭和9)]

飛ぶ蝶 [油彩・合板/1934(昭和9)]

蝶をモチーフに、夢幻的な光景を描いたこの作品には当時最新の芸術思潮であったシュルレアリスム(超現実主義)の影響もうかがえる。三岸はまた同時期に、「蝶ト貝殻(視覚詩)」という詩も創作している。

喫茶コーナー「きねずみ」

喫茶コーナー「きねずみ」

知事公館の庭園内にある同館は、木立に囲まれた美しいロケーションも魅力のひとつ。併設する喫茶コーナーでは、コーヒーのほか近隣から取り寄せたパンや焼き菓子などを用意。喫茶だけの利用も可能。

北海道立三岸好太郎美術館

住所
札幌市中央区北2条西15丁目
電話
011-644-8901
公式サイト
https://artmuseum.pref.hokkaido.lg.jp/mkb/
備考
※営業時間・定休日などの詳細はHPを御覧ください。