札幌市時計台
毎正時に鐘の音が街に時を告げる、現存する日本最古の時計塔
※2019年11月21日更新
「札幌市時計台」その正式名称は「旧札幌農学校演武場」。北海道大学の前身である札幌農学校の施設として、初代教頭であるクラーク博士の構想に基づき明治11年に建設されました。これまでに教育団体の事務所や軍用施設、昭和には市立図書館として活躍してきたこの建物は、昭和45年6月に国の重要文化財に指定。幾度かの修復工事を経ながら、現在は札幌市を代表する名物スポットとして、そして市民に時を告げる時計塔として愛され続けています。
外観だけではもったいない! 館内に入ってこそ楽しい
「少年よ大志を抱け」で知られるクラーク博士が構想、第2代教頭のホイーラー氏が平面プランを作成、開拓使の主席建築技術者であった安達喜幸らの設計・監督により明治11年10月に建てられた「札幌市時計台(旧札幌農学校演武場)」。赤い屋根と白い壁が印象的ですが、一時期は壁の色が緑だったという記録も残っています。その面影は、館内見学をすることで感じることができます(要見学料)。
2階建ての館内は、1階が大展示室、2階がホールとなっています。館内に足を踏み入れてみると内壁がうすい緑色をしているのが分かります。1階の大部分は、「旧札幌農学校演武場」や「札幌市時計台」の歴史や歩みを知ることができる資料やパネルを展示。館内にはシニアボランティアが駐在していることもあり、タイミングが合えば説明を受けることができますよ。
近年は高層ビルや大型マンションが増えたことにより、その範囲が狭まりましたが、かつては市内の大部分まで鐘の音が時を告げていたことが展示物から分かります。また、明治時代に札幌は幾度かの大火に見舞われます。明治25年に起こった大火では、農学校の学生たちが屋根に上って降りかかる火の粉を払ったという逸話も残されており、多くの資料からどのように時計台が守られてきたのかを知ることができるのです。このほか、VTRによる解説スペースや時計台にまつわる資料を収めた図書スペースも。札幌農学校時代を現した全景模型もあるので、じっくりと見応えがあります。
クラーク博士と姉妹時計が見られる2階ホール
2階ホールは、明治時代に授業などを行う講堂として使用されていた場所です。ここでは、2017年に新たに設置されたクラーク博士像に出会うことができます。こちらの像は、クラーク博士が教頭として着任した50歳頃を当時の写真や資料を基に作られました。ベンチにともに腰掛けて記念撮影ができるとあって、旅行者にも大変人気です。
演舞場の広い空間を生かし、夜は演奏会や講演会などが行われることもあります。見学が可能な日中は資料映像の放映などを行っています。
2階ホールの両サイドには、時計塔にまつわる資料や展示が。札幌農学校演武場として建てられた当初、建物には時計が付いていませんでした。明治14年に当時の黒田清隆開拓長官の命を受け、新たに時計塔を付設してアメリカの「E・ハワード社」製の時計装置が取り付けられました。当時は腕時計や懐中時計はとても高価なものであったため、時計塔が設置されることで市民に時間を知られる役目を担っていたといいます。
塔時計本体は今も現役で活躍しているため、実物を間近で見ることはできませんが、同じ仕組み・同じアメリカ「E・ハワード社」製の姉妹機が展示されています。こちらは、本体と同様にネジを巻き、石の振り子によって時計の針が進む仕組み。近くで見ると迫力があります。
本体は週2回ネジ巻き作業が行われ、豊平川の石で作られた振り子によって時計に針が打たれます。ホールでは毎日9時15分から、姉妹機を使って館長によるネジ巻きのデモンストレーションが行われており、間近でその仕組みを知ることができます。ネジ巻きの後は館長による説明を聞けるのもうれしい。
上手に写真が撮れる、3つのスポット
「札幌市時計台」を訪れたからには、しっかり写真に残したいという人も多いでしょう。時計台の敷地内には撮影スポットが設けられており、ここからスマートフォンを縦にして撮ると全景を1枚に収めることができます。時折シニアガイドが巡回しているので、シャッターを押すお手伝いもやさしく引き受けてくれますよ。
また、時計台正面入り口のちょうど真向かいにある「札幌MNビル」の2階には時計台撮影テラスがあります。旅行者や一般の人に無料で開放されており、自由にテラスへ向かうことができます。少し高い位置から全景を撮影するにはこちらがおすすめです。さらに時計台背面の斜め向かいには札幌市役所があり、こちらの駐輪スペースにも時計台撮影スポットが設けられています。夏季は市役所19階の展望回廊が無料開放されているので、上から時計台を撮影してみるというのも良いかもしれません。
お土産も要チェック
館内に入ってすぐの場所に、ショップがあります。ここでは札幌の銘菓などが販売されているのですが、缶に時計台がデザインされたキャンディーやクラーク博士がプリントされたバター飴など、土産店ではなかなか見かけないツウな土産も販売。キーホルダーやマグネットなどもあるので、見学の際にはぜひ立ち寄ってみて。
日没からのライトアップ
館内入館は17時までですが、日没すると時計台はライトアップが施されます。LEDライトが白い外壁に映え、荘厳な姿を望めることでしょう。ライトアップは21時30分までとなっています。また、冬は時計台を包む雪がライトアップで一層と輝きを増し、キレイなので冬の夜もおすすめです。